<女子教育促進メッセージソング Msungwana Shaina>
2013年7月、マラウイ国ムジンバ県のある小学校で、日本のNGOによる給食プロジェクト開始の準備をすすめている時のこと、校長のローズマリー・カマンガ先生と話をしている際に、女子小学生の欠席率と中退率が6年生(10-11歳)から急激に高くなることを聞きました。カマンガ先生がいうには、各村の女性グループが、初潮を迎える年頃の女子を集め、女の子は学校に行かなくてもいい、家で家事に専念し親がすすめる相手とできるだけ早く結婚するように、と教育するというのです。カマンガ先生はこの悪しき伝統を大変残念に思っていました。
マラウイの女子小学生のうち、8年生を終了して卒業するのはわずか47%、男子生徒に比べ10%も低い率となっています。マラウイ女性の平均結婚年齢は17.4%と世界の中でも最も低い国のひとつであり、児童婚は、女子小学生の高い中退率、10代女子の妊娠、そして女性の貧困につながり、またひいては人口の急増が国の経済成長をはばむ原因にもなっています。
マラウイの女子小学生の中退率が高い理由は、学校への道のりが長い、雨季には川があふれて通られなくなる、生理用品の不足等数多くありますが、女子生徒が周囲の大人に諭されて小学校を中退し児童婚に備えるというカマンガ先生の話は、長く私の頭の中に残りました。何かできることはないか?女の子に学校へ行くなという周りの人々の意識を変えることはできないか?
マラウイ人は歌と踊りが大好きです。結婚式、お葬式、政治家の遊説・・と人が集まれば歌と踊りが始まります。そういう国民性をもつマラウイ人にメッセージを送るには、歌が最も効果的な手段ではないかと思ったのが、このメッセージソング・プロジェクトの始まりです。
メッセージの主な対象が村落部の中高年であることから、マラウイの国民的スターであるルシアス・バンダ氏に歌ってもらおうと考えました。バンダ氏は40台前半、13歳の時から音楽活動を続けており、昨年の選挙では国会議員に返り咲いた人でもあり、マラウイ人なら老若男女誰でも知っているミュージシャンです。
メッセージソングのタイトルは、Msungwana Shaina (女の子を輝かせて)。歌詞は全てマラウイの現地語ですが、土台となった英語の歌詞は次の通りです。
Girls can do lots more than cooking nsima
Girls can do lots more than drawing water
Give them time to grow
Give them time to think what’s best for them
Send your girls to school and let them stay
For the bright future of the girls
For the bright future of Malawi
Let your girls shine
バンダ氏から「マラウイ人には、娘を学校へ行かせたらどんなにいいことがあるかを伝える必要がある」という提案があり、現地語の歌詞やミュージックビデオのストーリーには、その旨が反映されています。
今年7月のDVD発表以来、マラウイに拠点を持つ国際団体やNGOにビデオを紹介し、村落部で活動する際に人々を集めて上映してほしい、メッセージを広めてほしいと依頼しています。その結果、ユニセフ、VSO、マラウイのNGO等が女子教育促進活動のテーマ曲として使用してくれるようになりました。今後は女子小学生の中退率が最も高い地域を対象として、バンダ氏のライブツアーを企画したいと思っています。
人々の意識を変えるのには時間がかかります。校舎を建設したり、川に橋をかけるよりも長い時間がかかるかもしれませんが、この曲が小さな第一歩のきっかけとなればと願います。
ミュージックビデオはYoutubeにMsungwana Shainaのタイトルでアップロードされていますので、日本の皆様にも、この歌のメッセージをマラウイの美しい景色とともに鑑賞していただければ幸いです。